第38章 存在は
「よう」
翌日、扉を開けるといつも通り現れた火神に苗字が嬉しそうに微笑みかける
あの後2人でやり取りした結果、お昼を一緒に食べてから帝光に向かおうということになったのだ
『迎えに来てくれてありがとう火神君、行こっか』
「準備終わってんのか」
『うん。大丈夫』
扉を閉めて火神と一緒に歩き出すと一番気温が高い時間帯だからか、少し歩いただけで汗が噴き出てきてしまう
それを見越して持ってきていた日傘を差して苗字が歩き始めると、傘で見えなくなった彼女に火神が問いかける
「その傘意味あんのか」
『全然違うよ?差してみる?』
日傘を受け取った火神が掲げてみると、違いが分かったのか軽く頷いて傘を返す
2人で入れるサイズではないため苗字は申し訳なさそうに傘を受け取り、日の向きに向かって差し直した
「何か食いてえのあるか?」
『マジバ以外ならなんでも、昨日食べたし』
「オレも別にねえんだよな…」
『あ!じゃあ平日限定のランチバイキング行こっか?』
そんな苗字の提案により目的地が決まった彼らは歩き出す
途中の信号待ちの時間が溶けてしまいそうなくらい暑かったが進まないわけにもいかないので頑張って歩き、目的地へと辿り着く
平日のせいかすんなり席にも座ることができ、昼時を過ぎているせいか主婦らしきグループが目立っていた
『火神君、先取ってきていいよ』
「いいのか?」
『うん。火神君の方が食べるだろうし』
言葉通り火神は先に取りに行き、戻ってくればお盆いっぱいに皿を乗せており、その皿の上にも山盛り料理が乗っていた
いつもと変わらぬ火神の様子に笑いながら、続いて苗字が取りに行き戻ってきて食べ始めればこちらの様子も伺わずに食べ続ける
そんな火神を見ながら、苗字は本日のパスタをゆっくりと食べていた