第36章 花札
ロビーへ戻ると木吉とおじいさんがまだ花札で遊んでいたので2人のいるテーブルへ歩みを進める
木吉は戻ってきた虹村の表情が少し暗いことに気が付きながら、彼に苗字がいたかどうかを問いかけた
「おう虹村、いたか?」
「いや、いなかった」
「そうか」
「誰か探しているのか」
「ええ、少し」
「…意外と近くにいたりしてなあ」
「だといいんですけどね」
最後の候補だったこととから焦りが生まれ心に余裕がなくなり虹村の表情が険しくなったためか、ロビーが静かになり重い空気が流れる
それに気がついた虹村がハッと顔をあげ、先ほど問いかけてきた木吉に自分が去る時疑問に思っていたことを投げることにした
「そ、そういや木吉、お前膝診てもらわなくていいのか」
「…忘れてた!」
「わしにつかまってたことにしておけ」
「すまんなじいちゃん!また!」
「わしもリハビリ行くかぁ、じゃあな虹村君」
「あ、ありがとうございました」
バラバラになっていく彼らを見て虹村が溜め息を吐く
少し時間は早いが酒でも飲んでその後グループにメッセージを送るかと来た道を戻り、外に出るとまたも暑い空気がまとわりついてきて表情がゆがむ
「…ビールが美味く飲めそうだ」
ぽつり呟いた虹村は行きと違って歩いて帰路を進む
家の近くのコンビニで酒を買って遅い昼飲みするかと沈んだ心に楽しみを作りながら、病院を去って行った