第35章 なんでいる?
「覚えてるか」
『なんですかそれ』
「…お前が残してった手紙だ」
『読んでも?』
無言の彼から察するに読んでいいんだろうと開くと、確かに自分の字で手紙が書かれていた
今より少し汚い自分の字と、ところどころ滲んでいる字を見るに泣きながら書いたんだろうと察する
時期を見るにちょうどインターハイの前、誠凛に拾われる前ではないかと憶測し、読み終えたところで手紙を畳んで彼に返した
『いつからあたしは黛さんと一緒に?』
「5月」
『黛さんが再入部した後か…』
その記憶もまだないが、彼女は顎に手を添えて何かを考え始めた
最近の状況や思い出した記憶を見るに薄々思っていたが、思い出深い場所ではなく洛山に自分が隠されているのではないかと推測し、雑談で聞かされていた彼らが既に行った場所に洛山があったかを確認する
『洛山にはもう行ったんですっけ』
「ああ、赤司が寮含めて確認してるって言ってたな」
『ぐう…黛さんの部屋にいるかと思ったのに…』
「…男子寮に隠すなんてしねえだろ」
ちょうどそこで機械音が鳴り始め、ここまでだということを知らされる
じゃあもう一体どこに自分が居るのかと投げやりになりながら消えていく景色と共に意識を飛ばし、黛はいつも通り目を覚ました