第35章 なんでいる?
「ボクたちの役割っていうのは、何なんでしょうか」
『うーん…それを言うと答えになっちゃうから、言えないかも』
「…話し過ぎると、消えてしまうんでしたっけ」
『うん。火神君から聞いたのかな』
コクリと頷くと「そっかあ」と彼女は火神の事を見始める
そのまましばらく沈黙が続き、サーフィンをする彼の様子を見ていると大きなビニールを持った紫原が視界の端で大きく手を振り戻ってきた
「名前ちーん、黒ちーん」
『紫原君、おかえり』
「まいう棒シャインマスカット味あったから買ってきたよー」
「シャインマスカット味ですか…」
『灰崎君は?一緒じゃないの?』
「あっちー」
紫原が視線を向けた先には、火神と同じような恰好をした灰崎が砂浜を歩いている
周りの人を観察しているのか灰崎はサーフボードを砂浜に刺してから火神の近くへと行き、しばらく見ていればいい感じに波に乗っていた
「紫原君はやらないんですか」
「やんねーし、そもそも服のサイズねーと思う」
『確かに。紫原君サイズはないかもね』
そのままサーファーたちの様子を見ていると、先ほどまで波に乗っていた人たちがなぜかバランスを崩しうまく乗れずに海に落ちていく
何だ何だと彼らのことを見ていると火神が灰崎に向かって何かを言っており、どうやら灰崎が他の人の技術を真似して、奪っているようだった
そんなことすれば確かにみんなそうなるだろうと納得し、脚を半分海に入れたまま「危ない」など言い合いしている彼らを見て微笑ましいと笑う