第35章 なんでいる?
グループでのやり取りの末、休みが合った3人が電車を降り、曇っているおかげでいくらか過ごしやすい道路を歩く
しばらくすると磯の香りと共に波の音が聞こえてきて、砂浜で写真を撮っている人が視界に入った
「思い出深い所とか、難しいよねー」
「つーかなんでそれで海来てんのか分かんねえんだけど」
「昔みんなでこの海に来たからです」
「テツヤはともかくアツシと一緒に歩いてんのが意味わかんねえんだけど、なんでオレ呼ばれたんだよ」
「この2人だと心配だからって、午前だけ練習だったボクが頼まれたんです」
そのまま砂浜を歩いていると、日傘を差して海を見ている女性が視界に入る
藍色の髪が風に吹かれて揺れ、その勢いに顔を背ける苗字と黒子の目が合い、気づいた彼女に手を振られていた
『黒子君、久しぶり』
「…名前さん」
「なんでここにいるのー?」
『火神君のサーフィンしてる姿見たいってお願いしたの』
「待ってる間苗字1人か」
『うん。泳げないから一緒に出来ないし』
「ナンパされますよ」
『大丈夫。もう海開きしてないし、誰か来ると火神君が飛んで来るから』
後ろから砂の上を走る音が聞こえてきて、「ほら」と笑う苗字の指さしと共に振り返ると、サーフボードを抱えて走ってくる火神の姿があった
明らかに急いでいる彼は飛んできたように彼らに近寄るが、途中で誰だか分かったのか走るのをやめ、歩いてこちらへとやってくる
「なんだよお前らかよ!」
「火神君、こんにちは」
『ごめん火神君、心配させた?』
「なんかあったら困るから気にかけてんだっつの…ったく」
「火神面白い格好してんな」
「ウェットスーツだわ!」
「美味しそうな魚いた?」
「いても捕らねえからな!?」
濡れた髪をガシガシと掻く火神とウェットスーツが渇いてくるのを黒子が見て、彼とて波に乗りたいだろうと火神と同じくサーフィンしている人をちらりと確認した黒子がある提案をする