第34章 ここで彼らは
悔しい気持ちがあるからと言って目の前の2人に当たるのは話が違うと分かっている黄瀬は溜め息を吐き、力を抜いてパッと明るい笑顔を浮かべる
「やっぱいなかったっスね!」
「…黄瀬」
「じゃあ黒子っちたちの行く海に期待か!
いやー見つけたら名前っちと最初に話すのオレが良かったんだけどなー」
いつもと同じテンションだがどこか様子の違う黄瀬に緑間が不安そうな表情をする
彼も高尾ももちろん行く先々でその気持ちを持っており、行けば行くほど焦る気持ちがあるので無理に笑う黄瀬の気持ちは痛いほど分かっていた
「その海っつーのは誰と行ったの?」
「オレたち5人と黒子と桃井、苗字だ」
「何回?」
「2年の時の夏の1回っスね、楽しかったっスよ」
当時を思い出しているのか2人とも表情が柔らかくなる
だが高尾が聞きたいのはそう言うことではなく、みんなで行ったとはいえたった1回の場所に苗字を隠すかどうかが疑問だった
「オレはそんなとこに隠さねえと思うけど、2人はどう思ってんの?」
「…オレでも海には隠さないな」
「あとまだ来週行くとこあんだろ、虹村さんが病院行くっつってたし」
「可能性があるなら病院の方が高いっスかね…中学の時も入院してるし」
「オレもそれについてはそう思うが…ずっと答えの出ない役割の方が気になるのだよ」
「そうっスねー…オレの役割なんなんだろ」
どれだけ討論しても答えは出ないし、出たとしてもあってるか分からない
聞いても教えてもらえないことは火神から聞いている
そんなモヤモヤとした気持ちを抱きながら彼らはグループにインターハイの会場にもいなかった旨を報告し、まだ暑さの残るアスファルトの道を歩き始めた