第5章 彼女の想い人
苦笑いを浮かべていた赤司はゆっくりとその笑みを消し、重い雰囲気をまとわせながら飲み物を一口飲み、火神へと「ここからが本題だ」と話し始めた
「お前は名前に、惚れているだろう?」
「ブホッ!」
赤司の唐突な一言に驚いた火神はチーズバーガーを撒き散らしそうになり、黒子に「火神君汚いです…」と言われて「悪かったな…!実際吹いてねーんだからいいじゃねーか!」と怒った
だが彼の唐突な一言に動揺しているようで、慌てふためいていた
「な、なんで」
「見ていれば分かる。当たり前だろう」
「それが何と関係があるんだよ!」
「…もし名前がお前に告白をしてきたら、付き合ってくれないか」
「赤司…君?」
「お前…自分の恋人が他の人と付き合っていいのかよ」
「良い訳無いだろう。考えるだけで火神に向かってハサミを突きつけてしまいそうだ」
彼の一言に火神が青い顔をすると赤司は「安心しろ冗談だよ」と明るく笑って、彼のギャグが笑えないことを改めて痛感した
そして「もしイラついたらバスケでボロボロにするさ」と真顔で答え、それには黒子が表情を和らげた
「名前とお前が付き合ってもオレにメリットは少ない…だが、オレとお前を彼女が重ねているのならば、思い出す可能性が上がるんだよ」
「…思い出さなかったらどうすんだよ」
「何を言っているんだ、思い出させるに決まっているだろう」
そう言った赤司は「いざとなったら電気ショックとか催眠療法も使えるかもしれないね」とクスクス笑い、冗談だとわかるのだが、どうしてもそれを実行してしまうのではないかと火神は再び顔を青くした
顔を青くしている彼に赤司は「引き受けて、くれないか?」と少し悲しげな笑みを浮かべながら問いかけ、火神は大きな溜め息を吐いて、「…わーったよ」と了承の言葉を投げた