第34章 ここで彼らは
「…ここでシュート撃ってたろ」
『誰がですか?』
「お前以外誰がいると思ってんだ」
弾ませたボールを投げると、彼女はまたもゴールを決める
確かに昔から体育館で手が空くとひたすらボールを放っていた
ブロックが居なければ外れることがないそれをまた放ってふと後ろを振り向くと開けたはずのない扉が開いており、とある記憶が流れてきた
『…ああ、そういうこと』
藍色の時に同行した誠凛の合宿の際、黒子が体育館の入口から声を掛けて来て、なぜかその瞬間にひどく頭が痛くなったことを思い出す
あの時は黒子とずっと一緒だったしそういうこともあるだろうと思っていたが、今脳裏に流れてきた映像から察するに、あれは彼ではなかったんだとボールを持ったまま静止した
『あれはテツヤじゃなくて、征十郎だったのか』
「何1人でぶつぶつ言ってんだ」
『シュート撃ってた時に、征十郎に見つかりました?』
「…あったな」
『やっぱり。それで?話してませんでしたか?』
「いや、お前の姿はオレにしか見えなかったから話してはない。筆談してたな」
『…え?なんで?それで征十郎見つけたんですか?』
「ボールが動いているのを見て誰かいるのが分かったらしい」
『はー…流石征十郎…』
脳裏でボールを思い浮かべればいつのまにか知らないボールが転がってきている
それを手にした苗字はボールを放った
緑間とも実渕とも違うが綺麗なフォーム目を奪われていると、どこからかいつもの規則的な音が聞こえてくるボールが綺麗な弧を描いた末、ネットを潜り落ちると同時に彼の目が覚めた