第34章 ここで彼らは
『この2号は喋らないよ』
「…そうですか」
『黒子君もストバスしておいでよ。見てるから』
「テツ君頑張ってね!」
「はい。行ってきます」
黒子が出て行きチーム分けしているのを見ながら彼女たちがベンチに座る
チーム分けが決まったのか彼らは火神の持っていたボールで3対3のミニゲームを始め、懐かしい光景に目を細めた苗字が楽しそうに笑ってから桃井に話しかける
『良かったさつきちゃんとゆっくり喋れる機会が出来て』
「…名前ちゃん」
『2人で喋りたかったんだけど、なかなか誘えなかったから』
「そんな!いつでも誘ってくれてよかったのに」
『そうもいかないよ。私のせいで夏休みなのに忙しいでしょ?』
「名前ちゃんのせいじゃないよ!」
『私はこの子を消した側なのに?』
「そうかもしれないけど…名前ちゃんが理由なしにそんなことするとは思えないし…」
『ふふ、私信頼されてるなあ』
再びうちわで仰ぎだす彼女の視線の先には火神がいる
先に動いていたから身体があったまっているのか他の人物に比べ動きが良い気がし、楽しそうに戦っている彼を見る彼女もまた楽しそうだ
『この光景を大事にしたいのは、私も一緒だよ』
「名前ちゃん、でも」
『大丈夫。さつきちゃんは気にせず探してあげて』
じゃあどうして隠したりしたんだろうと、桃井の心の奥が揺れる
それでも彼女とはお別れを出来ていなかったから、また会えて嬉しいという気持ちがあるのも事実
大晦日、消えてしまう前に火神を見つめていた時と同じように見つめる彼女にぎゅっと抱き着くと、いつもと変わらないシャンプーの香りがした
「私はどっちの名前ちゃんも大事だよ」
『…ありがとうさつきちゃん」
急に始まった女性同士のハグにコート内はざわついていたが気にせず続けるように進言し、腕を離した彼女たちは2号と戯れ遊び始める
途中飲み物買いにコンビニに行って、結局日が暮れるまで彼らはバスケをしていた