第34章 ここで彼らは
セミの鳴き声を聞きながら日傘を差す女性と日焼けした男性が並んで雑談しながら歩いていると、女性が誰かを見つけたのか手を振り始めた
「テツ君!!」
名前を呼ばれた男性も、その周囲にいる人も彼女の方を向く
黄瀬と高尾が笑いながら手を振るが、緑間は無表情で眼鏡のブリッジを上げ、黒子は無表情のまま彼らの事を迎え入れた
「桃っち青峰っち、おはよっス」
「天気よくて良かったなー、あんときみたいに雨降ったらどうしようかと思ったぜ」
「よく天気まで覚えているのだよ」
「インターハイ予選で真ちゃんが泣いてたからな
ウィンターカップ予選のときにその話しただろ?それで覚えてんだわ!」
「泣いてないのだよ」
「あー私その時電話したかも!」
「もしかしてお好み焼き食べた時っスか!?懐かしいっスね黒子っち!」
「はい。火神君がたくさん食べた時ですね」
「アイツはいっつもバカみてえに食ってんだろ」
「青峰もけっこー食ってるけどな!」
全員集まったことを確認した黒子は駅に向かい、電車に乗る
彼らは背の高さからか賑やかだからか注目を浴びながら自分の目線より低いつり革につかまり、改めてメンバーを確認した緑間が溜め息を吐いた
「こんなに人数が必要だとは思えないのだよ」
「まーまー、いいじゃないっスか
あの時いたメンバーみんな来れたんスから!」
「オレそんときいなかったのになんで呼ばれたんだよ」
「いーじゃない!どーせ寝てるだけでしょ!」
「ッチ…」
いつも通りの雑談をしながら最寄り駅へたどり着き、下車し歩けば本日の目的地へと到着する
誠凛と秀徳がお互い全力を出し戦った場所、ウィンターカップへの切符を手にした場所であり、緑間にとっても高尾にとっても色んな意味で思い出深い場所のためか、着いた瞬間に目を細めた