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【黒子のバスケ】トリップしたけど…え?《4》

第32章 可能性が高いところから





『黛さん』


今日も呼ばれる名前に目を開けると、懐かしい天井が視界に映る

下は柔らかく、確認するとベッドに寝ていることに気が付いた

起き上がれば狭い部屋の中苗字が椅子に座ってこちらを向いており、今まで見たことのない部屋に首を傾げていた


『ここは?』

「…寮だったころのオレの部屋だ」

『確かにラノベがたくさん置いてあるなと思ったんですよね』


ベッドから立ち上がり机の上を見れば当時読んでいたラノベが並んでいる

こんな感じに並べていたかと懐かしんでいると椅子から立ち上がった苗字が横に立ち、同じように並んでいるそれを見てから問いかけてきた


『黛さん、ここで叫びました?』

「…雨の日に帰ってきたら暗い部屋の中お前が髪を乱してうつ伏せで倒れてたんだよ」

『怖…あれ、屋上から出られないんじゃなかったんですっけ?』

「気がついたら来れるようになってたんだよ。何カ所かな」

『好感度上がると解放されるみたいな?』

「上がるわけねえだろ」

『ふーん?』


あの時隣人から心配され、見えない人間に驚いたなんて説明できず、テレビと誤魔化したことを思い出す

絶対に違うものが原因だと分かっていたのにツッコんでこなかったのは、本人に伝えてはいないが今でも感謝していなくもない


「…屋上と部屋に往来できるようになって、ここに入り浸ってただろ」

『え、黛さんと一緒に寝てたんですか?』

「腹も減らねえ眠くもならねえ。で、ずっとラノベ読んでたな」

『ふーん…だから幽霊?幽体離脱?』


納得したのか彼女は昔屋上で渡した小説の3巻をとる

あの時渡したのもその本だったと当時の情景を脳裏に浮かべていると、何ページかパラパラとめくった苗字がすぐに本を閉じ片手で元々並んでいた場所へ戻す


『確かにこの本、読んだことあります』

「そりゃ読んでたからな」

『…やっぱりこういうことがあったんじゃないですか』


はいかいいえで答えられる問いに答えなかったことを根に持っているのか、苗字がジト目でこちらを見つめてくる

その目と視線が合った瞬間、いつもの機械音が聞こえてきた

いつもより早い気がすると段々と大きくなる音につれ、世界が遠くなっていく

次に目を開けた時には、いつもと同じ天井が黛の視界に入った






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