第32章 可能性が高いところから
帝光に行く約束当日、身支度を整えた赤司は懐かしい道を歩き出す
とは言っても1年と数か月前に苗字の記憶を取り戻すために歩いたこともあり、別に帝光に行く以外でも歩くことがある道
それでもどこか気持ちが違うのはなぜだろうと自分の中で問いかけていると、あっという間に帝光の前に辿り着く
赤司より背の高い人物が既に1人、スマホをいじりながら待っていた
「虹村さん、早いですね」
「普通だろ」
「オレも名前のことが気になって早めに着いてしまったんですけどね」
けれど2人が着いたのは特段早いわけではない。そのまま雑談を交わしていると中学時代のように髪を1つに束ねた桃井といつもと雰囲気の変わらない黒子が話しながら歩いてきた
「赤司君―!!ごめんねお待たせ!」
「赤司君、虹村さん、おはようございます」
「オイ桃井、オレは」
「勢いで挨拶できなくて…今日はよろしくお願いします。虹村さん」
「一緒に来たのかい?」
「ううん。そこで一緒になっただけ」
彼らは帝光中学校の校内へと踏み出し、歩き出す
何か変化があるかと思ったが特に何もなく、部活に励む学生を横目に職員室を目指し歩いていると、桃井が不安そうな声でつぶやいた
「そんなすぐに名前ちゃんが隠れてることはわかるのかな」
「…藍色の名前はすぐ分かると言っていたけどね」
「つーか隠れてるっつーのがわかんねぇんだけど、どういうことだ」
「隠れてるんだと思います」
「答えになってねー…」
職員室で手続きを行い、1年生からの教室を順番に見ていく
懐かしい思い出話に花を咲かせて2年生、3年生の教室を見たが、何かが起きるわけではない状況に桃井が不安そうな表情をする
その気持ちが分かる3人はその表情を見て何か言葉をかけようか悩んでいたが、桃井自身で気持ちを切り替え笑顔を浮かべた