第5章 彼女の想い人
「よう、待たせたな」
「やあ…すまないね火神、呼び出して」
「いや別にいいんだけどよ、とりあえずチーズバーガー70個くれー頼んできていいか?」
「ああ、オレも着いていこう」
「わりーな奢ってもらっちまって」
「まず70個くらい頼む時点でそう思ってないだろう」
そう会話をしながら彼らはレジへと歩み始め、しばらくするとトレーに大量のチーズバーガーを載せた火神と人数分の飲み物を持った赤司が戻ってきた
赤司は彼らに「シェイクが溶けてしまっただろう」と言って2人が頼んだものと同じシェイクを配り、火神にもLサイズの飲み物を置き、自分の前には普通のサイズの飲み物を置いた
火神は桃井に「わり、隣座るな」と断りを入れてから彼女の横に座り、チーズバーガーをリスのように頬膨らませて食べ始めた
「火神、食べてから言ってしまってまるで脅迫のようだが、お前に頼みたいことがある」
「…断ったら食った分吐けとか言わねーよな」
「言わない。約束しよう」
「ああ…わかった。なんだその頼みたいことって」
彼からの真っ直ぐな瞳を見た赤司は少し目線を逸らしてから、またチーズバーガーを食べる彼へ目線を向けた
「どうやら名前は、お前に好意を抱いているらしい」
「…好意?」
「…名前ちゃんがね、今日言ってたの「赤に惹かれる」って、「火神君と一緒にいると懐かしい感じがする」と、「落ち着く」って
それで…「これが恋なのかなぁ」って、かがみんが作ったクッキーを見ながら言ったの」
「おい、それって」
焦る火神に黒子はゆっくりと口を開いて、「名前さんは、火神君に恋愛感情を抱いているようなんです」と言葉を落とし、聞いた火神はチーズバーガーをトレーの上に落とした
彼らの間にはいつだか経験した、微妙な空気が流れていた