第5章 彼女の想い人
「何で赤司君はそうやって1人で抱え込んじゃうの?
中学の時も、1人で抱え込んで…赤司君の責任だとは言わないけど、だけど、だからみんながバラバラになっちゃったんでしょ?!」
「…桃井、お前、中学の記憶…持ってたのか」
「持ってた。あの4月1日からずっと、けどそんなことが起こったなんて認めたくなかったから…ずっと否定し続けた。分からないフリをしてた
名前ちゃんがいないだけであんなに違う事が起こったのかと思うと、私は名前ちゃんにお礼を言い切れない…だから名前ちゃんが戻って来てくれたとき嬉しかったし、みんなが思い出してくれたときは本当に、泣きそうだった!」
「…」
「私はずっと…みんなで笑い合って、赤司君と結ばれて、幸せそうにしている名前ちゃんを見てるのが、私は見たいの。ねぇ…関係ないなんて言わないで
いつも…みんながバラバラになる時も、名前ちゃんが消える時も、私は…見ていることしかできなかった。だから…だから!」
「桃井さ…ん」
「見てるだけは…もう嫌なの!!」
そう桃井が叫ぶと店内は一気に静かになったが、彼女はそれを気にせずに涙を自分の手に落とした
圧倒されたのか赤司は珍しくポカンとした表情をしていて、黒子はそんな彼を見て笑った
「確かに、名前さんと赤司君がどんな恋をしようと勝手かもしれませんが…それを手伝う権利は、ボク達にだってあるでしょう?」
「テツ君…」
彼らの話しを聞いた赤司は「そうだね…すまない」と非を認めて謝り、目を擦る桃井に「目が腫れるからハンカチを使え」と言ってハンカチを渡した
ハンカチを受け取った桃井は「ありがとう」とお礼を言って涙を拭い、だいぶ溶けてきているシェイクを飲み始めた
「黒子、火神を呼んでくれないか」
「呼んで、どうするんですか」
「話をするだけだ。チーズバーガー好きなだけ奢ってやるから来いとついでに伝えてくれ」
「…わかりました」
あまり乗り気ではないようだが黒子は火神とのトーク画面を開き、火神に今からマジバに来るようにメッセージを送り、赤司からの伝言も送った
するとわずか1分後、彼から「マジかすぐ行く」と短いメッセージが返ってきて、それからわずか十数分で彼はマジバにやってきた