第32章 可能性が高いところから
練習を終えた黒子が校外に出てスマホを見ると、赤司から不在着信が入っている
用件は分かっている。先日話したあの件だろうと相田からの返事を確認し、彼に電話をかけた
「すみません赤司君、練習が長引いて」
「いや、こちらこそすまないね。どうだった?」
彼が問いかけているのは先日、苗字を探しに帝光に行こうと言う話から同日に誠凛もいけないかという相談だった
確かに別々で行けば時間がかかるし手間であることは間違いない
黒子は先ほど確認した相田からの返事をそのまま口にする
「帝光に行く日なら監督もいて大丈夫だそうです。事情もある程度話してあります」
「ああ、帝光も練習試合だから1軍に誰もいないが、入っても問題ないよう手配してくれるそうだ」
「じゃあ予定通り行きましょうか。他にメンバーは?」
「予定通り桃井と、虹村さんが空いているから同行してくれる予定だよ」
「みんなと休みを合わせようとすると、なかなか難しいですよね」
だが探すだけなら人数が少なくても問題ない。他の面々も一緒に行きたかったが大事な時期なのでしょうがないと言い聞かせた
期限は夏休みが終わるまでと言っていたが、練習や試合があり探せる日にちは少ない。早く見つかってくれることを、誰もが祈っている
「見つかりますかね」
「個人的には1番確率が高いと思ってるんだけどね」
「ボクもです」
赤司から聞いた候補の中なら間違いなく帝光が1番なことは違いない
可能性が高い所から潰していくのは賛成だが、これで両方見つからなければどうしようと不安が心の端に存在はしていた
「あと詳しいことはメッセージでやり取りしようか」
「そうですね。また」
「ああ。気を付けて」
「ありがとうございます」
短い挨拶の末電話が切られる。彼はみんなに思い出深い所があったら行ってみてほしいと言っていた
一緒に過ごした時間は赤司の次に長いことは自覚していた。だから他の誰かが空いている日ではなく、自分が空いている日を選んだろうと黒子は推測している
可能性は僅かだが今日のこのまま、中学時代部活帰りにみんなで行ったコンビニに行ってみようと、いつもより遠回りして彼は帰路を歩いた