第31章 彼女の存在
今日も薄目を開けると真っ白な空間だった
選ばれたと言っていたがまさか見つかるか消えるまで毎日これなのかと眉を寄せると、今日は横たわっているのか背中に床の感覚がある
起き上がると今日も視界に帝光の制服を着たオレンジ色の髪の女が座っていた
『おはようございます』
「…こっちは寝てんだけどな」
『もしかしていつもの音は目覚ましの音ですか?』
「ああ」
『じゃあここ本当に黛さんの夢の中ってことなんですね』
納得したのかうんうんと頷いている彼女は今日、いや昨日会った彼女と雰囲気が違う
コイツの方が調子が良いと口にしたら怒られそうなことを考えていると、彼女は「あ」と何かを思い出したように声を上げた
『そう言えば幽体離脱したことあるか聞いてきましたよね?』
「ああ」
『こういうことがあったってことですか?』
「…」
『別にはいかいいえで答えられる質問じゃないですか!簡単に答えてくれればいいのに!』
こういうことかと聞かれると、近いようで遠い気がする
あれは夢ではなく現実だった。ただそれを苗字が忘れている、というより忘れさせられているだけだと問いに答えるつもりのない黛は考える
「…赤司がどこに隠れてるか知りたいっつってた」
『えー…祭り会場じゃないんですか?』
「知るか」
ピピピとまた音がする。目覚ましの音だと察していると、今日も彼女の姿が消えていく
この短い時間のやり取りで一体何に選ばれたんだと疑問に思いながら、身体が重くなるような軽くなるような感覚に身をゆだねていると自室の天井が目に入る
「…はぁ」
外を見ると今日は雨だった
セミが鳴いておらず気温は低いが、じめじめしていてこれはこれで外に出たくない
とりあえず顔を洗うかとベッドから立ち上がり、まだ覚醒してないのか欠伸を一つした