第31章 彼女の存在
『黛さん』
名前を呼ばれて目を開けると、昨日と同じく帝光の制服を着た苗字が目の前に立っている
2日連続同じ夢かと思ったが、夢なのに夢じゃないようなこの感覚は年始にもあった
確か2号が出てきたあの時だと、そのことを思い出した黛は溜め息を吐く
「昨日といいなんなんだお前」
『聞きたいのこっちです。ここどこなんですか?』
「…オレの夢の中だろ」
『…ほう?』
真っ白な空間に佇んでいる彼女は昔、赤司が入学してきたばかりのことを思い出させる
連日夢に苗字が出て来ているのに驚いた様子を見せない黛に首を傾げ、問いかけた
『黛さん、あんまり驚いてないですね』
「…昔屋上で本読んでたら空から勢いよく女が降ってきたことあってな」
『…へえ?』
「あれに比べりゃ全然マシだ」
心がざわつくような感覚に苗字が手を胸に当てる
以前彼にあった時に頭が痛くなったことを思い出し、その疑問をまた黛にぶつけた
『…小説を3巻から渡したのって、それに関係してますか』
「さあな」
『征十郎が、1年生の時黛さんの近くにオレンジ髪の女性がいたって言ってて』
「…あいつ」
『あ、そう言えばお正月渡してきた最終巻、読みました』
「唐突になんなんだ」
『不思議ですよね、読んだ覚えないのに話が分かるんですよ』
「そうか」
『それを聞きたく、て』
彼女の声を遮るようにまた規則的な機械の音が聞こえてくる
自分のアラームの音だと気が付いた時には自室の天井が目に入り、寝た気がせずまだ眠たい目を擦った