第31章 彼女の存在
「あいつがいるって場所、どっか候補はあんのか」
「名前の家は見させてもらったがいなかったね」
「家?」
「昨日の帰りに寄らせてもらったが見つけられなかった
あとはオレの家も一応確認したが…まあいなかったね、火神の家は?」
「…いや、家にいると考えてなかったから普通にシャワー浴びてベッド入っちまった」
「そうか。確認しておくといいよ
名前が家に行ったことあるのはオレたちと…黄瀬かな」
赤司の脳裏に黄瀬と一緒にピアスを開けたと話していた彼女の言葉が思い浮かぶ
だがもし自分が隠す側ならわざわざそこを選ぶ気はしない
藍色の苗字の反応を見るに本気で隠すことはないと彼は考えており、選ぶのならもっと思い出深いところだと候補を指折り口に出す
「あとは候補に帝光、誠凛、ストバスコート、病院、遊園地…全中の会場や東京体育館もあるが…」
「多いな」
とは言うが赤司も苗字のすべての行動を知っているわけではない
中学の時も知らぬ間に高尾と仲良くなっていたし、知らぬ間に誠凛の人と仲良くなっていて進学を決めていたりと、恐らく自分の知らない場所もある
「小学校とかはねえのか?」
「一応いくつもりだよ。あとは洛山かな」
「赤司の高校、なんか関係あんのか?」
「少しね。何か所か回って外れだったらいくつもりだ」
思い返せばここに行った、あそこに行ったと色々な場所が思い浮かぶ
懐かしい記憶に手を止めていると、チーズバーガーをまた1つ胃の中に入れた火神が気になっていた疑問を赤司に問いかけた
「オレと苗字、2人で会っていいのか?」
「ああ、構わないよ。何ならオレでは聞けないことを聞いてきてくれ」
「…オレにそんなことできるわけねえだろ」
「そんなこと考えず好きに会話してくれていいさ。何か新しい情報があれば共有してくれ」
珍しい組み合わせの2人はそのまま食事を共にし、帰路を歩く
まだ火神の心の中はざわついているが、1人でチーズバーガーを食べていたほどではない
赤司と別れてから、明日の練習はしっかり集中しなければと頬を叩き彼は1人歩みを進めた