第30章 久しぶり
ふと目を開けるといつか見た真っ白な空間、現実味のない空間に夢なんだと察して佇む
ここはどこで、なんなんだろうと苗字が歩いていると、薄灰色の髪色をした人が少し先に立っていた
『…黛さん?』
知識にある名前を呼ぶと、急に聞こえた声に黛が振り返る
いつかのように帝光の制服を着たオレンジ髪の女が立っており、年末見た姿より明らかに幼い姿に眉をひそめながら口を開いた
「苗字」
『どうも?』
「…なんか、若くなったな」
黛からの素直な意見に苗字が肌を触り、服装を確認する
中学時代の制服を着ていることと、肌のすべすべ具合から当時の姿に戻っているのだと察した
『中学時代に戻ってるかもしれません。肌にハリがあります』
「いくつだ」
『この見た目なら中2か中3ですかね』
「そっちじゃねえ」
何もない空間でほぼ彼女にとってはほぼ初対面の黛に気を遣って言葉を探す
『ちゃんと喋るの、初めてですよね?』
「…そーかもな」
『でも黛さんはあたしのこと知ってますよね』
「自意識過剰じゃねえのか」
『インターハイ準々決勝の日、話しかけて来たじゃないですか』
「こっちには色々あるんだ」
言葉を濁す彼にそれ以上追及することが出来ずまた沈黙が流れてしまう
彼にどう聞けば話してもらえるのかと考えるために腕を組むと、段々と規則的な機械音が耳に入った
「なんか、透けてねえか」
『え、あ、ほんとだ…ちょっと、ちょっとー!!』
そんな規則的な音とともに黛が目を覚ます
カーテンの隙間から差し込んで来ている日差しに眠い瞼を擦りながら、先ほどまでのは夢だったのかと起き上がった