第30章 久しぶり
『赤司君ごめんね、送ってくれてありがとう』
「気にしなくていいんだが、1つお願いを聞いてもらえるかな」
『うん。なに?』
「名前がいるかどうか、部屋を見せてもらえないだろうか」
目をぱちぱちと瞬きさせた彼女を見て、彼はここに探している苗字はいないんだろうと察したが、だからといって家に上がることをやめることはしなかった
これで居ないだろうからと思い込んで、実は寝ていたとなったら後悔することは目に見えている
赤司のいつもより真剣な眼差しに、ふんわりと微笑み返した彼女は巾着から鍵を取り出した
『合鍵持ってるんだから勝手に入っちゃえばいいのに』
「そういうわけにもいかないだろう」
『赤司君はそんなことしないよね。ふふ、いいよ』
苗字がカギを開け、そのまま扉を潜り中に入る
いつもと変わらない様子の彼女の家に迎えられ、リビングや彼女の部屋を見るが探している人物が寝ているような様子はない
なんなら某猫型ロボットのように押し入れで寝ているのではと和室の押し入れまで見たりしたが、そんなことはなかった
『雪さんの部屋も見る?』
「一応聞くが、そんなところに寝かせるのかい?」
『私だったらしないかな』
「…覗くだけ覗いていいだろうか」
『うん。もちろん』
扉から隙間を作り部屋を見るが電気がなく真っ暗で何も見えないが、彼の勘がここではないと言っており、扉を閉めすべて見終わった彼は小さく息を吐いた
そのまま帰ろうかと玄関に向かうと、外からドアが開きいつもよりオシャレな服を着た雪が家の中に入ってくる
廊下を歩く赤司と苗字にと目が合った彼女は一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに顔に笑みを浮かべた