第30章 久しぶり
広場に着くと、花火は終盤を迎えていた
知らない誰かの視界を遮ってまで彼らが待つ場所は戻らなくていいかと後ろで花火を見て、終わってみんなから退場を始めようとしてるところに合流する
雰囲気の違う彼女に気が付いた彼らが目を見開いた
『久しぶりみんな、ごめんね本物じゃなくて』
先ほどまでいたオレンジ色ではない彼女にどう声を掛ければいいのか困っていると、火神と苗字の目が合った
柔らかく微笑む彼女に懐かしさを覚えながら一瞬下唇を噛み、みんな疑問に思っているであろうことを問いかける
「…何があったんだ?」
「名前が迷子になってしまったんだ。それ、で」
『赤司君、私から話すよ』
見た目はほとんど一緒なのに、纏う雰囲気が違う苗字に思わず彼らの背筋が伸びる
彼女自身も懐かしい顔ぶれを見ながら一呼吸置いて、いつも聞いていた苗字の声より落ち着いた声色で話始めた
『あの子は今この身体にはいない
だけどどこかで眠ってる。それを探すのがみんなの試練で、期限は夏休みが終わるまで』
「期限?」
「それを過ぎたらどーなんだよ」
『…もう2度と会えなくなる、かな』
「そんな…!」
周囲からは「花火が綺麗だった」や「この後のみに行こう」と賑やかな雰囲気だが、彼らには花火の後とは思えないほど落ち着いた静かな空気が漂っている
『でもみんななら乗り越えられるよ。大丈夫』
存在を奪いに来たわけでもなさそうな彼女の様子に安心した彼は張りつめていた空気を壊すように安堵の溜め息を吐いた