第29章 りんご飴
「おかえりー」
「あれ、赤ちんだけ?」
「ああ、名前が迷子になってしまってもしかしたら先に戻ってきてるかと思ったんだが…来てなさそうだね」
「え!大丈夫なんスか?!」
「とりあえず探しに行ってくる。これは頼まれていた品だ」
「赤司君1人で大丈夫ですか?」
「もし名前が戻ってきたらここにいるよう伝えてくれ…ただ」
「ただ?」
「少し、嫌な予感がするんだ」
普段未来が見えているんじゃないかと思えるくらい赤司の発言にその場にいる全員の表情が曇る
高校生の時も夏祭り迷子になったがその時とは違う気がすると、黒子も顎を手に添え何かを考え始めた
「電話はつながらないんスか?」
「先ほどまで電波が悪くてね、こっちに来てから掛けてみたが出ない。向こうの電波が悪いんだろう」
「ならなおさらみんなで行った方がいいんじゃねーの?」
「もうすぐ花火が打ちあがる時間だろう」
「花火より名前ちゃんの方が…」
「桃井さん、一緒に待ってましょう」
「…でも」
「名前さんが戻ってきたとき、人数が少ない方が悲しみますよ」
「正月迷子になった時も火神1人で迎え行ったしな」
「あれは迷子じゃなくて脱走なのだよ」
「ひとまず行ってくる。なにかあれば連絡くれ」
荷物がなくなり身軽になった赤司が駆けていく
花火を楽しめるような雰囲気ではなくなってしまったが、黄瀬が切り替えるように手を叩いて笑った
「赤司っちなら見つけてくるでしょ!大丈夫っスよ!」
「そうですね。名前さんも子供じゃないですし」
「フン、人混みの中から黒子を見つけるよりかは簡単なのだよ」
「まー人混みの規模が違うけどな」
「オレ行った方が良かったかな~」
「ムッ君が目立つから逆に見つけてくれるかもね」
「なんでもいーからメシ食ってようぜ」
「ちゃんと名前ちゃんの分残しとけよー」
それぞれの心に不安はあるが気にしないように彼らはまたご飯を食べ始め、2人を待つことにした