第29章 りんご飴
他のメンバーから頼まれた買い物を終え戻ろうとすると、すごい人混みで前が進めなくなっている
打ち上げ開始時間の15分前。みな広場に向かう頃かと周りの状況に納得しながらまた溜め息を吐いた
『荷物1つくらい持とうか?』
「大丈夫だよ」
『はーそう言うと思ってた』
「かなり混んできたね」
『うん。戻るの時間かかりそう』
「少しくらい遅れても大丈夫だろう」
『ご飯ないって怒られない?』
「この状況ならしょうがないからね」
そんな会話をしながら牛歩のような速度で歩いているといつぞやのように苗字の下駄が足から抜ける
思わず立ち止まると彼女の後ろの人が驚いた表情をし、流石に手を繋いだままは迷惑かと赤司の手を離した
『ごめん下駄すっぽ抜けた!』
「名前!」
『先行ってて!後から追い付くから!」
そんな彼らの間を人が通り、ゴールテープが切れるように手が離れ人の波が間を通っていく
逆走しようとすると人の流れがあり、赤司が彼女を追いかけるのは難しい
「…名前!」
流れから外れその場を探すが見慣れたオレンジ色の髪が見つからない
珍しく焦る様子を見せる赤司がスマホを見るが周りの人が多すぎて回線が重くなっている
先に戻っている可能性もあるかと手にある荷物を置くためにも脇道を使って戻ると、カラフルな髪色の中に探している彼女の姿はなかった