第27章 おそろいの
外を見ていると黒いスーツを着た女性が歩いており、苗字が先ほど小金井と話した就活の話題を思い出す
『うー…就活生か…』
「もう動いてる?」
『企業研究とかは始めてるけどさー…もう違い分からないよね。あたし何になりたいんだろう…』
「卒業と同時に結婚して専業主婦になっちゃえばいいんじゃない?」
『小金井先輩と同じこと言うじゃん…けど1回は職に就いておきたい…』
「まだ2年生なのにねー」
みんなとがむしゃらに過ごしていた中学生活が昨日のように思い出せるのにいつの間にこんな年を取ってしまったんだろうと、今日2回目の時の流れを感じている彼女たちに日替わりランチのパスタが運ばれてくる
女子大生らしくスマホで何枚か写真を撮ってから、フォークをくるくると回し巻き付け食べ始めた
『そうだ、さつきもうお酒のめるね』
「みんな飲めるようなったらご飯行こう!」
『成人式テツヤ飲めないもんね、そうしよっか』
「誰が1番強いかなー?」
『征十郎でしょ』
「…そっか、そうだよね」
『これで弱かったらそれはそれで可愛いけどね』
溶けて体積が少なくなった氷がカランと音を立ててグラスの中で動く
下戸な赤司の姿を想像したのか、桃井はクスクスと笑っていおり、パスタをまた1口食べる彼女を見ながら、中学時代苗字も赤司に肩を並べる存在だったのを思い出した
「名前ちゃんも強そう」
『どうだろうね』
「ふふ、花火大会の前にもう1回くらい名前ちゃんと遊びたいな」
『基本暇だしいつでも誘って』
「そんなこと言ったら毎日誘っちゃうよ」
『それはお金がなくなるから勘弁』
「バスケだったらお金かからないね」
『やる?2人で?』
苗字の問いに答えず、桃井は楽しそうに笑っている
「本当に良かった。名前ちゃんの記憶が戻って」
『その話何回目よ』
「何回でも言うよ。私名前ちゃんとまた遊べてすごい嬉しいもん!」
『はは、あたしも一緒だよさつき』
「また2人で出かけてくれる?」
『出かける選択肢しかないよ』
今日何度目の似たような会話だろうかと2人で目を合わせて笑う
そのまま話しているとランチセットについているプチデザートが届き、他愛ない話をしながらそれを食べた