第24章 動物園
「待たせたね。オレからのももらってくれるかい?」
『…いやな予感しかしないなぁ』
「ただの口紅だよ。どうぞ」
『なにがただの口紅だよ!袋がデパコスじゃん!』
「不満かい?それならオレが使うが」
『デジャヴ…絶対征十郎使わないじゃん…何色でも似合いそうだけど…』
全く似たもの親子だと腰を折り曲げ頭を抱えると、彼女の向かい側で赤司のお父さんが笑っている
楽しそうで何よりだと体制を戻しても彼は楽しそうに笑っていたが、次の瞬間真顔に戻った
「征十郎が嫌になったらいつでも言ってくれ、教育し直そう」
『いや、大丈夫です。大丈夫なので…あの、冗談なら笑ってもらえませんかね』
次の瞬間笑い出す彼に、苗字が安堵し息を吐く
冗談が笑えないのは父親譲りなのかと昔から察していたことに困ったように笑う彼女に、赤司の父親がフッと笑う
会うのはおよそ5年ぶり、まじまじ見ると彼も年を取っているが、目元にうっすらできている笑い皺が微笑ましいのはなぜなのだろうか
「また夕食を共にしよう。待ってるよ」
『ありがとうございます。ぜひ』
「征十郎を頼むよ」
『どちらかっていうと世話されてるのこっちな気がしますけどね…』
「はは、帰りに車出そうか」
『大丈夫です。征十郎に送ってもらいます』
「いつもそう言って断られてしまうね」
「オレは名前と帰れるからいいけどね」
「私も一緒に行こうか」
『そんな、あの…早く休んでください』
だいぶ面白い人になったなと思いながら彼に見送られる
いつも年度末で会えなかったから改めてお礼を伝え、あの頃と同じように赤司と苗字は久しぶりの赤司邸を出た