第23章 チョコを配ろう
「チョコ、もらっていいかな」
『ど、ドウゾ』
「ありがとう」
彼女が持っていたチョコを手に取ると、そのまま腕を広げきゅっと抱きしめる
赤司からの止まらないスキンシップにどうしていいのか分からず、腕の中で固まっている苗字にまたも笑いながら先月の事を思い出した
「この間、寝てしまって悪かったね」
『…もうその話しなくていいよ。気にしてないし』
「そうか」
そのまま沈黙が続く。周りの音が聞こえないのではないかというくらい大きい心臓の音と、赤司の温もりに包まれて脳の容量が少なくなっていく
どうすればいいのか、嬉しいがそろそろ離してほしいと考えていると、まるで伝わったかのように背中に回っていた腕がほどける
汗はかいていないが全身が熱い。パタパタと手で仰いでいると、渡したチョコレートを赤司が見つめていた
「食べていいかい?」
『う、うん。どうぞ』
ラッピングを開けて一つ取り出し、そのまま口に運ぶ
味見もした。紫原も美味しいと言っていたのに苗字に不安な気持ちが襲ってくるが、飲み込んだ赤司はふわりとほほ笑んだ
「ああ、美味しいよ」
『よかった。作るの久々だから』
「名前の作るものはなんでも美味しいけどね」
『あんまり作った覚えないけどな…』
特に彼に振舞った覚えはあまりない。レモンの蜂蜜漬けとか、あとは調理実習くらいじゃないかと昔の記憶を思い出していた