第23章 チョコを配ろう
「もっとデートして!」
『え』
「オレ名前っちの幸せ応援するって決めたんス!だからもっとデートして!」
「…するかい?」
『いや、デートしなくても別に全然いいよ。忙しいだろうし』
「そうなんスか?付き合ってるのに?」
『…したくないわけじゃないけど』
「そうっスよね!そうっスよねー!!」
黄瀬が楽しそうに苗字に同意している横で、赤司が嬉しそうにはにかんでいる
言った本人は恥ずかしいのか俯いて耳まで真っ赤にしながら、解放されたので手を頬に当て熱を冷ます
「そーだ!最寄り駅から歩けるとこでイルミネーションやってるんスよ!綺麗だし良かったら行ってみて!」
『…アリガトウ』
「黄瀬は誰と行ったんだい?」
「部活の先輩たちっス…ナンパのために使われただけなんス」
女性じゃないのかと思ったが口を噤む。高校の時も森山から合コンセッティング係だったりナンパの指南を任されていたりした
大学でもその役割は変わらないらしく、黄瀬のものらしきカバンの横にはバレンタインチョコが山のように置いてあった
「じゃーオレ練習戻るっス!じゃあね名前っち赤司っち!また遊び行こ!」
『うん。ありがとう。練習頑張って』
「黄瀬、また」
大きく手を振って見送る黄瀬の瞳に映る赤司と苗字の後ろ姿は中学の時、帰り道別れた後にこっそり振り返ってみていた時と変化はない
先日の遊園地の出来事を思い出しながら、彼は自主練習するため体育館の中へと戻った