第23章 チョコを配ろう
冬休みが終われば後期の試験がやってくる
苗字が記憶が戻る前にした火神に勉強を教えるという約束を黒子と共に果たし、なんとか赤点ギリギリで彼は試験を切り抜けたそうで再試を受けることは免れた
そうして試験を乗り越えれば春休みがやってくる
今までより倍近い長い休みだが彼らはバスケ部、春休みとて部活はある
なんだかんだ予定が合わず会わない日々が続く
だが来週にはバレンタインがやってくる
流石にもう大学生だしバレンタインのチョコをどうするか
まあ彼も忙しいかと苗字がメッセージで送ってしばらく経つと、電話がかかってくる
「もらえるならどっちでも嬉しいが、選べるなら手作りをもらおうか」
『電話で返すほど?』
「むしろどうして既製品の選択肢が?」
『いや…何となく』
「当日は練習午前中だけだから、午後から会おうか」
『え?練習午前中だけなの?』
「ああ。監督が娘さんとチョコを作るそうでね」
何とも微笑ましい理由だと笑っていると、電話の向こうで「再開するぞー!」と知らない人の声が聞こえてきた
「じゃあ戻るよ、あとで連絡する」
『うん。頑張って』
「ありがとう」
通話が切れる。短い通話時間を確認してから今年は何を作ろうかとネットでレシピを調べ買い物に出た
そしてバレンタイン前日、何年ぶりなのかわからないがキッチンに甘い匂いが漂う
ふと気づくが付き合って、というより好きあって初めてのバレンタインではないかと気がつく
高校1年生には消えてしまったし、2年生以降はこの場にいなかった
さすがにもう大学生だし既製品の方が聞いたところ「手作りがいい」と言っていた苗字の記憶は新しい
『…ま、どーせみんなに配るなら作ったほうが安いかな』
そう。どうせカラフルな彼らに配るのだ
全員が喜んで受け取るかは分からないが、とりあえず中学時代はずっと渡していたのだからいいだろう
そのまま作業を続け、日付が変わってから眠りについた