第22章 おでかけ
『何したいの?部屋?』
「ああ、すぐ終わるよ」
廊下もリビングも、通るすべてが懐かしいと思う
大晦日に出かけてからそのままになっている自分の部屋に行き、カバンだけ置いて彼女は約束のものを探し始める
『あった、これこれ』
「ネクタイも取ってあるんだね」
『え、征十郎捨てたの?』
「まさか、取ってあるよ」
軽く笑う彼は、見つけた箱からネックレスを取り出し彼女の首の後ろに手を回す
急な出来事に何ごとかと心臓を跳ねさせると、首元に赤いスワロフスキーが付いたネックレスがかかっていた
「良かった。もう1度着けている姿を見られて」
『え、これ?』
「ああ。自分でつけたかった」
『…ソウ』
良かったような残念なような、いや何が残念なのかと自問自答を繰り返していると赤い瞳が真剣にこちらを向いていることに苗字は気づく
一体何なんだと心臓の動きをさらに速くなる自分にどうすればいいのか困っているところで、彼から口を開いた
「聞いてもいいかな」
『な、何?』
「オレは名前が好きなんだが、付き合ってくれるかい?」
『…は?』
「好きだとは言ってくれたが、付き合ってくれるとは言われていないからね」
真顔なあたり本気で聞いているんだろう。いつもどこか余裕があり、何もかも見透かしているような猫のような赤い目は不安そうに少し揺れている
絶対笑う場面ではないと苗字もわかっているが、思わず吹き出してしまった