第22章 おでかけ
思っていなかった方向、後ろからの引力にバランスを崩すと赤司が苗字を支える
ゆっくり進んでいくゴンドラを見ながら赤司がスタッフに話しかける
「やっぱり別で」
「え!え!?」
「ははっ、じゃあ黄瀬と2人で楽しんでくるか」
「え、えー!?」
軽快に笑う虹村の声が、扉が閉まりこもった形で聞こえてくる
黄瀬は泣いているが、さらに奥のゴンドラでは高尾が大笑いしているのが遠いが何となくわかる
『せ、征十郎』
「みんなともいいが、2人で乗りたいじゃないか」
周りにいた女性から小さく黄色い声が上がる
スタッフの人に振り回して申し訳ないと思いながら次のゴンドラを案内されたので乗り込み、彼らは向かい合うように座った
『ちなみにあたしとグループ分かれたらどうするつもりだったの?』
「分かれるわけないだろう」
『ああ…ね』
そういうところは自信満々なんだと考える苗字を乗せて扉を閉められたゴンドラはゆっくり動く
ちょうどいいと、彼女はお昼に疑問に思ったことを赤司にぶつける
『征十郎のお父さんって、あたし消えたら性格変わったりする?』
「…急にどうしたんだ」
『いや、あたしは征十郎のお父さんを改心させられたと思ってるんだけど』
「ああ」
『あたしが消えたら記憶?改ざんされるわけじゃん?変わったりしないのかなーって…』
「まあそうだね、でもオレも名前の記憶は消えていたわけだから特に疑問は思わなかったかな
高校1年生の時居なくなった時も、オレは京都の別邸にいたしね」
『…そう?それでなんもなければいいんだけど』
苗字がなぜそんなことを聞いたのか、昨日まで柔らかかった父親がまた急に厳しくなったら辛かったんじゃないかと考えていた
だが確かに言われれば彼らは消えた後記憶を消しているし、記憶が残っているときは一緒に住んでないから問題なかったんだろうかと少し苗字の心が軽くなる