第21章 おかえり
ジッと瞳を見つめられて、顎に手を添えられる。そこまでされて何をされるかなんてもう分かっていた
目を閉じると再び柔らかいものが唇に当たる
すぐ離されるかと思いきや、離れないよう自分の後頭部に彼の手がまわっていることに気が付いた苗字は、赤司の後頭部をべしっと叩いた
「何するんだい」
『こっちのセリフだよ!もう!』
「顔が真っ赤だよ」
『誰のせいだと思ってんの?!』
怒っていると、彼はまたも楽しそうに笑う。こんな言い合いをしていると中学生の時に戻ったようだ
再び赤司が苗字を見つめるが、彼女は彼の唇に目が行ってしまって今更なところはあるが恥ずかしくなってしまう
「それでこそ、オレが惚れた名前だよ」
『今日何なの?すごい褒めてくるじゃん』
「オレは今の名前と藍色の名前は別人だと思っていたからね」
『…うん』
「京都に行ったとき、このまま監禁してしまおうかと思ったよ」
『ねえそれギャグ?ギャグだよね?』
昔から彼にギャグセンスはなかった。というか冗談なのか本気なのかが分からない
ここ最近のなかで1番楽しそうに笑う彼を見るあたり冗談なのだろうと考える。そうだと信じたいだけかもしれないが
そんなことを考えている苗字の手を赤司が両手で握る。誰のせいか分からないが体温が熱い彼女に比べ、 彼の手は冷たかった
「今度は、居なくならないでくれ」
『…う、うーん。うん』
「…そこは約束するべきじゃないのかい」
『だって自分の意志で行ったり来たり出来ているわけじゃないし…』
先ほどまでの笑顔が嘘のように無表情になった目の前を彼に「どうしようもないじゃん」と彼女は小さく呟いた