第21章 おかえり
『征十郎』
「…なんだい」
『なんでもない』
赤司はそのまま苗字の頭を撫でる。耳元で聞こえる彼の呼吸に合わせて肺の収縮を感じ、目の前の彼が生きていることが分かる
なんとも言えないこの感情の名前は、何なのだろうか
「…まだ、好きでいてくれるかい」
『征十郎こそ、目移りしてんじゃないの』
「するわけないだろう」
嘘をついているかなんて分からないが、彼が自分と一緒にいた時間本当にバスケしかやっていなかったことは知っている
いなかった間もバスケに打ち込んでいたんだろうと容易に想像ができる
『征十郎』
「なんだい」
『…好き、です』
1人で恥ずかしくなって俯くと苗字の背中に回っていた腕が肩に置かれ、頬に手を添えられる
赤司の顔が近づいてきて唇に柔らかい何かが触れる。彼の唇以外何もなかった
びっくりしてバランスを崩し倒れるがマットレスがクッションになって痛くはない
『っせ、征十郎!』
「すまない。嬉しくて」
『理由は聞いてないって…急はやめてよまだ戻ってきて間もないんだから』
「許可取ればいいのかい?キスしたが問題なかっただろうか」
『事後承諾…』
「名前なら避けられただろう。受け入れてくれたわけじゃないのかい?」
『蛇に睨まれた蛙の気持ちがわかったよ』
「この半年我慢してたんだ。多めに見てくれないか」
『そんなキャラだったけ?』
「昔から変わってないと思うが」
『…ごめんね、待たせて』
「オレは忘れてたからね、今日までが辛かっただけだよ」
口元に手を添えてくすくすと笑う彼の姿は懐かしく、少し大人びた気がする
このいなかった時間は短いようで長かったんだなと、改めて実感した