第21章 おかえり
「おかえりなさい。無事でよかったです」
『テツヤもたくさんありがとう。たくさん話聞いてくれたね
緑間も、落ち込んでるとき一緒にいてくれてありがとう』
「ふん…気にすることないのだよ」
「やっぱ苗字はうるさいくれーじゃねえとな!夏になったらザリガニ釣り行こうぜ!」
『大学生にもなってそんなことやってるのか、勉強しろ』
「オレとは一緒にホットケーキ作ろうね~」
『あーそうだね、ふわふわのやつ。作らなきゃね』
何も変わってない彼らの様子に込み上げてくる何かを必死に抑える
桃井と黄瀬を撫でることに集中することでそんな気を紛らわしている彼女のことを一番奥で、優しい表情で彼は見つめていた
「おかえり、名前」
『…ただいま、征十郎』
「待たせすぎだね。いつも」
『すみません』
身動きを取りたいが変わらず桃井が胴に、黄瀬が首に巻き付いているので動けない
心があったかくなる
ずっとずっと会いたいと思っていた彼らに会えたのだ。気まずいとか言っていた気持ちはどっか行ってしまう
逆の時だってたくさん気を使ったのだ。彼らだってたくさん気を使ってくれただろうと思い、手を伸ばしそれぞれの頭を撫でた。一部の人には屈んでもらい、もちろん火神の頭も彼女は撫でた
『火神もありがとう。一番の功労者なんじゃない?』
「特に何もしてねえけどな」
『えー?そんなことないよ今日だって探しに来てくれたでしょ?』
「抜け出したと聞いて心配したが何事もなくてよかったのだよ」
『いつも心配かけてごめんねお母さん』
「いつも言っているがオレはお前の母親では無いのだよ」
「そもそも最初歩道橋から落っこってるとこで心配したけどな」
『それはあたしの意思と関係ないっつーか…前回だって真上から落ちてきたし』
「ああ、黄瀬君が下敷きになったやつですね」
「着地くらいしろよ。そしたら忘れなかったんじゃねーの」
「まあオレは信じてたけどね~記憶戻るって」
「いや紫原っち最初消えそうな時泣いてたっスよね!?」
それは知らない話だと苗字は紫原の顔を見るが彼はそっぽ向いたままこちらを向こうとしない
その反応で言っていることが事実だと分かった苗字はまたも笑う