第21章 おかえり
「みんな首長くして待ってるわよ」
『ええ、なんか気まずくて…』
「ほら行くぞ」
『火神…少し前はあんなに優しかったのに…スパルタ』
「火神君ありがとう。迎えに行ってくれて」
「ウス、じゃあ連れてきます」
「よろしくね~」
雪に見送られながら火神に引っ張られエレベーターを待つ。流石にスポーツをやっていてゾーンに入れるレベルの男には勝てないとエレベーターが動き出したら苗字は大人しくなった
エレベーターから降りて自分の病室の前に立つ。開けようかどうかと悩んでいると火神から開けろという視線が刺さってくる
つい少し前までの優しかった火神はどこに行ってしまったのだろうか
自分の病室なのにノックをして扉を開けるとカラフルな瞳がこちらを向く。苗字の視界が揺らいだ
「名前ちゃん!」
「名前っちー!!」
『うわっ!ちょ、勢い!』
視界が揺らいだ瞬間に黄瀬と桃井が苗字に飛び込む。タックルを2人から受けるとバランスを崩すが、彼女の後ろで立っていた火神が支えたので何とか転ばずに済む
安堵の溜め息を吐くと、桃井が泣いていることに気がつく
「おかえりぃ名前ちゃん…ずっと、ずーっと待ってたよ」
『さつき…待っててくれてありがとう』
「本当に良かった~もう、もう居なくならないでね」
「ほんとっスよ、オレ、もう名前っちに殴って貰えないのかと」
『殴られたいってこと?』
「言葉の綾っス!調子狂うんスよ!やっぱり!」
『それはどういう意味だ?』
肩の辺りで泣いている桃井の頭を撫でながら、反対側で抱きしめている黄瀬の発言に苗字が笑う
そんな彼女の姿を見て黄瀬が腕に力を込める。たまにはいいかと、彼の頭も撫でてあげることにしたようで両手でそれぞれの頭を撫でる