第20章 消えた彼女
「さあ帰りな、みんなが待ってるよ」
『うん。本当にありがとう2号』
「火神、彼女をみんなのとこまで頼む」
「ああ、じゃあな」
そう言った彼らが空間から消えていった
誰もいなくなった空間で2号はようやく一段落したと伸びをする
この犬の姿も1年近くしているのだ。慣れてきてしまった
「名前、いるかい」
そう呟くとオレンジの光とともに苗字が現れる
ただ髪はオレンジ色ではない。藍色の、消えたはずの苗字だった
目を開けきょろきょろと周りを見る。手足があることを確認し、2号に話しかける
『…私、消えてないの?』
「僕と同じだよ」
『2号と?』
「僕たちにはまだ仕事が残っているからね」
『…仕事?』
理解が追い付いていない彼女には申し訳ないが、やってもらわなければいけないことがある
先ほどまで喋っていた苗字とは違った雰囲気を持つ彼女を見た
「3つ目の願いを、叶えてあげないとね」
それが良い方に転ぶのか悪い方に転ぶのか、叶えようとしている彼さえも答えは知らない