第20章 消えた彼女
「お目覚めかい?」
『…に、ごう?』
声を発した彼女に火神がバッと顔を向け、駆け寄る
「苗字!起きたか!」
『火神?あれ、なんでこんなとこに…』
「大丈夫か、オレのこと覚えてるか?」
『ええ、何目覚めて早々…』
ブンブンと彼女のことを肩をつかみ揺さぶる火神を見て、彼は医者には向いていないなと2号は思う。そもそも学力が足りないのだが
2人の近くに立ち苗字の様子を見るが、特に異常はなさそうだ。小さく頷いて彼はしゃべり始める
「元気そうだ。話を始めよう」
『いやいや始めるって言ったってまず何?なんで火神ここにいるの?』
「覚えてないのかい、記憶にあるだろう?」
『…記憶?』
そう言われて脳が動き、この眠っていた間の別の誰かの記憶がただただ流れてくる
ぼーっと溢れてくる記憶を見ていると、火神が2号に問いかける
「あの苗字は、消えたのか」
「…消えたよ。本物のこの子を守るためにね」
視界には2号と火神がいるのに、この9か月間の記憶が流れている感覚と、自分の知らない間の記憶が入っている感じが不思議で、説明がし難い
「2号、お前何でこんなことしたんだ」
「僕は彼女が願っていたことを叶えただけだよ、2つね」
『そういうときって3つ叶えるもんじゃないの?中途半端じゃない?』
「真面目な話してんだよ苗字!」
『ひどい火神』
マイペースな苗字の雰囲気に火神の涙が引っ込む
そうだ、こういう奴だったと彼は再会から5分も経たない内に彼女の性格を懐かしく感じていた