第20章 消えた彼女
『心配させたよね、ごめん』
「ああ、待ってたら赤司からここ行けって連絡あったから来た」
『赤司君が?なんで?』
「他の奴らは戻ってくるの待つってよ」
『…戻るか分からないのに?』
「赤司が探さなくていいって、ほら」
火神がトーク画面を見せてくる。居なくなったことに対し探しに行く?という意見は出ている
だが、どちらの名前だとしても彼女が戻ってくると信じているから探しに行く必要はないと赤司が発言している
それにみんな間違いないと賛同しており、会話はそれで終わっていた
『そっか』
ああ、記憶が戻っていることがバレているのだと察っし、もう打ち明けてもいいかと体の力を抜く
『…全部思い出したの。だけど、違うんだ』
「何が違うんだ」
『私はみんなが言ってる苗字名前じゃない。別人だって、本当はわかってた
火神君の部屋のアルバムを見た時も、みんなとの思い出が見えた時も懐かしいけど私じゃないって思ってた』
「ああ」
『だから、本物の私が目覚めたら、私が消えちゃうって、それもわかってた…』
「…」
『ずっと怖かった。明日起きたら私は消えてるんじゃないかって、1人になるのが嫌だったの
でもきっとみんなは私が消えることを、喜ぶんだろうなって思ってた
だけどそしたらきっとみんな、私のこと忘れちゃうから』
「…苗字」
『楽しかったんだみんなと一緒にいるの」
「…ああ」
『…わた、し、消えたくないよう』
彼女の頬に涙が伝うが、火神はその涙を拭っていいのか分からない
だが彼女の思っていることが間違っていると教えるべきなことは理解している
「…確かに最初は苗字に思い出してほしいって思ってた…けど、なんつーか、お前自身のこと、ちゃんとオレもアイツらも見てたはずだろ」
『私自身の、こと?』
「お前苗字と違って静かだし、1歩下がって見てたけど、何だかんだ言って似てたよ」
『…似てたかな?』
「ああ、忘れねえって約束する
他のやつらだって忘れねえよ、絶対」
『火神君』
「信じろよ。あいつを…あいつらを」
大粒の涙を流す苗字に火神が笑う。いつか立てた約束のように、小指と小指を交じり合わせた