第20章 消えた彼女
おじいさんの病室に入ると、紙袋を渡された
何だろうと思い取り出そうとすると、おじいさんは先に答えを言う
「孫の服じゃ。入るかな」
『どうして』
「夢のなかでお告げがあってな、女物の服を用意して待っておけと」
『…着替えさせてもらっていいですか』
「ああ、待ってるぞ」
病室から出ていったおじいさんから貰った服をよく見ると、昨日火神と出かける際に着ていたのと似たような服が用意されている
全く同じではないが、雰囲気が似ていた
サイズもぴったり。本当に孫の服なんだろうかと考えながら着替え、外で待つおじいさんに声をかける
『ありがとうございます。ぴったりです』
「ほれ行きなさい、今の時間なら人が少ないから」
『はい』
私服で病院内を普通に歩き、非常口を出て階段を下った
こういうところのカメラには映り込むかもしれないが、勝てるだろう。なんの勝負をしているかわからないが
病院の敷地から出てしばらくしたところで、振り返る
『さよなら』
その頃特に看護師たちが焦っている雰囲気もなく、無事に逃げられたであろう彼女を想像する
窓から犬が入ってくる。猫のようにしなやかな動きをして部屋に入ってきた
この犬だ夢に出てきたのは
「これで良かったか」
「完璧です。ありがとうございます」
「言い出したならおぬしがやればいいのに」
「できたら苦労しませんよ」
喋る犬に何も疑問も思わない。既に夢の中で知っていたから
本当かどうか疑問だったが、こうして本当だったのだから夢というものは馬鹿にできないと考える
「それでは」
喋る犬はそうして手短に去っていく。駆け下りていく姿も猫のようだった
「頑張れよ、お嬢ちゃん」
一方、病室で赤司が目を覚ます。さすがにずっと起きていたせいか長時間寝てしまった
変な体勢で寝てしまったせいか、体が痛い
体を起きて気がつく、本来寝ている人物がいないことに
「名前」
布団に触れるがすでに温かさはない
「名前は、検査中ですか?」
病室を出てたまたま捕まえた看護師に聞くとそんなことはないと答えられる。彼女はどこへ行ってしまったのかと病院が慌て始める
赤司も珍しく動揺しているが、深呼吸を1つしてグループに彼女が行方不明なことをメッセージで送った