第19章 大晦日
ふと目を覚ますと、真っ白な空間に寝っ転がっていた
天井のない真っ白な空間。上体を起こすと目の前にはオレンジ色の髪をした私が寝ており、それを守るように2号が佇んでいた
起きたことに気が付いたのか2号が話しかけてくる
「お目覚めかい?」
喋る2号のことは自分の記憶じゃないが、知識のようにパッと思い浮かぶ
「君とは、初めましてだね」
『そう、だね』
「その顔、本当に思い出したみたいだね」
『…私の記憶じゃない』
「それはそうだろう、君は作られた存在なんだから」
口内が渇く。心が何かに押しつぶされるような、いろんな感覚が一気に襲ってくる
反論すべく言葉を探していると、追い打ちをかけるように2号はまた1つ真実を突き付ける
「君は、この子が作った存在だよ」
『…』
「記憶を失った彼女が、勝手に人格を作り上げたんだ」
『そんなことない、お母さんのことは覚えてる』
「その記憶は誰とも共有できないのに本物だと言い切るのかい?」
舌打ちをしたくなる。彼女がこんなにもイライラするのは初めてだった
その相手がまさか自分だったなんて、思いもよらなかっただろう
「彼女はまだ眠たいらしい。2回目覚めたが、また眠ったよ」
『…だから?』
「消えてもいいと、身体を返してもいいと思ったら、あの場所においで」
景色が風に吹かれた砂のように消えていく。オレンジ色の彼女は、何も知らないままよく眠っていた
すべてのものが消えた時、その世界から意識を手放した