第4章 目覚めた彼女
それを聞いた彼らは扉を勢いよくあげて中へ入っていった
「名前っち!」
「っちょ、黄瀬押すなよ…」
そんな彼らを見ながら赤司は「雪さん」と話し掛け、「絶対、思い出させますから」と言って不敵な笑みを浮かべた
そんな赤司を見た彼女は苗字によく似た笑みを浮かべて、「ええ、頼んだわ」と言って去っていった
いざ自分も入ろうとすると高尾と火神が壁に寄りかかっており、「どうした、入らないのか?」と赤司が問いかけると、高尾がヘラッとわらった
「オレと火神待ってるから、終わったら呼んでくれよ」
「…なぜだい?」
「そりゃーオレと火神も入りたいのは山々だけど、一斉に人が来ても名前ちゃんが困るだろーしな」
「それに、お前らの方が苗字と過ごしてんだから、先会ってこいよ」
「…本当に、いいのか?」
そうまた問いかけると2人は「ああ」と笑って、赤司に早く行けと急かした
彼が中に入って扉を閉めた事を確認すると、高尾と火神は2人で顔を見合わせて笑った
「やー…アイツら名前ちゃんのこと大好きだねー」
「高尾もな」
「そーいう火神もだろ」
そう言って再び笑い出す彼は悲しそうに笑っていて、病室の扉をただただ見つめていた
一方赤司が病室に入ると苗字は困った表情を浮かべていて、赤司が来たことを確認すると「赤司君」と名前を呼んだ
『この子達も、友達?』
「…、ああ」
『初めまして…ではないんだよね。うーんと…なんだろ、自己紹介するのも変だしなぁ…
とりあえず、名前教えてもらえますか?』
「…本当に、忘れちゃってんだな」
『ごめんなさい…なんか…記憶が違うみたいで…私もよく分からないんだけど…』
彼女の「私」という一人称に、彼らはそれぞれ驚いたような反応を見せた
普段、彼女の一人称は「あたし」だった事に気づいた彼らは、今彼女が「私」を使ったことに違和感を持ち、現実を突き付けられた
そして彼ら、キセキ達は気持ちを落ち着かせてから、彼女へ話しかけた