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【黒子のバスケ】トリップしたけど…え?《4》

第19章 大晦日





最寄り駅が近づいた火神は苗字の方を見る、いつもより呼吸が浅いのが心配だった


「苗字、着くぞ」

『うん』


電車の白い光の下だからなのか、顔色が悪いように見える
でも、聞いても彼女は大丈夫としか言わないのだろう

到着したので行きと同様に彼女の手を引いて降りる。握った手がやけに冷たかった


「…大丈夫か」

『大丈夫だよ。ありがとう』


やはり彼女はそれしか返さない。いつもより様子がおかしいことは鈍感な火神でもわかる

電車を降りてベンチに座ろうかと提案とするが、彼女は帰ろうと言う。それ以上何も言えなくて、せめても荷物だけでもと持つことしかできない


彼も、いつも持ってくれた


乗っていた電車が通り過ぎていく。あの時彼は、なんて言っていたんだろう

分かっていた、聞こえていたんだから


___やはりオレはまだ、名前のことが好きみたいだね


頭が痛くなってくる。記憶を覗いた時のような痛みが襲ってくる


『か、がみくん、行こ』

「…ああ」


頭は痛いがなんとか1人で歩き、改札を通り外に出る。見慣れた街並みだった。


「送ってく」

『ごめん、頼んでもい、いかな』


彼もいつも練習の後送ってくれていた。途中から遠回りに、逆方向になってしまうのに

血が通る感じがしなくて、体が冷えていく感じがする。さらに浅くなっていく呼吸に、流石に火神も何も言わないのは耐えられなかった


「苗字、休むぞ」

『火神君…』


自分の手が透けているのが目に入る。消えるのはこれで何回目?


『きえ、る』


呼吸がさらに浅くなる。体のすべてが心臓になったかのように、ドクドクと音が響く

火神が苗字の体を持ち上げ、ベンチに座らせる

いつもより明らかに様子がおかしい


「苗字、黒子呼ぶな」

『黒子君…?』


___これ、あげます


彼は何をくれたんだっけ、ああ、そうだった。ミサンガ

それで代わりにタイをあげたんだった。高校生の時は黒子君にあげて、中学生の時は、


『っぐ…』


思い出そうと頭痛がひどくなる。そもそも思い出すほどのことでもない、自分の記憶じゃないんだから

電話をかけようとする火神の腕を掴んだ。消えかかってる腕だが、握力はちゃんとあるらしい






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