第19章 大晦日
「並んだら腹減った」
『早くない?でもちょっとわかるかも』
一段落してお腹も消化が落ち着いたのか何か少し何か食べられそうだ
再び出店が並んだところに行き、今回はベビーカステラなど甘いものも買う
苗字も分けれるものは何個か分けてもらう
そうして歩いていると火神がある屋台を見つけた
「苗字、りんご飴食うか」
『りんご、飴』
「前食ってたろ」
確かに夏祭りで食べていたが、前回食べた時と違い胸騒ぎが起きる
返事をしないとまた彼が心配してしまうと、窮屈になっていく喉から声を出す
『うん、食べる』
「でかいのと小さいのどっちだ?」
『っち、いさいの、持ち帰りで大丈夫。食後だし』
動揺している隙に火神がりんご飴を購入してくれている。財布を出そうとしたがまた断られてしまう
「ほらよ」
『ありがとう』
受け取ったりんご飴はビニールに包まれて真っ赤に輝いている
そう、彼のように鮮やかな赤色
「大丈夫か」
りんご飴と似た色の彼がこちらを心配そうに見ている
ああ、そうだ彼と同じ赤色だと納得すると、胸騒ぎが落ち着いた
『食べたら帰ろう火神君』
「ああ」
大人の2、3食分は食べたのではないだろうかという火神と境内を出て帰り道、行きと同じく街灯だけでなく提灯が道を照らす
普段はもう静まり返った時間だが人がにぎわっている
「調子悪くないか」
『うん、一瞬だったから大丈夫』
「それなら良かった」
電車に乗る前に苗字がりんご飴を仕舞おうとカバンを開く。自分が持つ、彼と同じ色のりんご飴
『火神君と…』
「あ?」
また胸騒ぎが始まる。違う
間違いなく火神と同じ色だと言い聞かせても今度は納得ができない
「苗字、電車来たぞ」
『うん』
行きと違い電車は混んでいなかった。まだまだ境内に人はいたのでこれから帰る人も多いだろうと推測し、なんとか2人並んで座ることが出来る
そういえばあの時も2人並んで座った、彼と
ボウリングの帰りのことだろうと自問自答するが、あの時は桃井と火神の間だったと自分の声が聞こえる
集中したいのに、周りの音が、声がうるさい