第19章 大晦日
桃井とウィンターカップの話や火神からクリスマスプレゼントをもらった話をする
桐皇学園は海常に惜しくも破れてしまったので、桃井は少し寂しそうだった
話が途切れたところで、苗字が前を向いたまま動かなくなる
「名前ちゃん」
『あ、ごめん。火神君のプレイ見るのなんか好きで』
「それでストバスコート行こうって誘ったの?」
『うん』
火神のプレイをじっと見つめたまま彼女は動かない
2人並んでバスケをしている様子を見ているのが懐かしくて桃井の視界が揺らぐ
気づかれないようにそっと上を向いて、涙がこぼれないようにした
元々太陽は沈んでいたが空気の暖かさが消えてさらに寒くなってくる
ようやく1on1をやめた青峰と火神、そこで苗字がハっと気が付く
『ご、ごめんさつきちゃん。なんか別世界いってたかも』
「ううん、大丈夫。楽しそうだったよ名前ちゃん」
「あー!疲れた!!」
「はぁーったく、ストップかけろよさつき!」
「えぇ?2人だけなんだから好きなタイミングで休憩取ればよかったのに」
「火神がどんどん始めっから」
「青峰だって乗り気だっただろーが!」
ウィンターカップのあの夜のように、彼らは言い合いを始める
桃井と苗字2人でいつものやり取りに笑ってしまう
「ワリ苗字、1回シャワー浴びに帰っていいか」
『うん。そうしよっか』
「大ちゃんも帰ろ、年越しそば食べれなくなっちゃうよ」
「そばより焼肉食いてえ」
「もう!お母さん蕎麦茹でれなくて困ってるんだよ!」
「へーへー」
青峰に向かって怒る桃井の意見は真っ当だ。時間的にも大晦日恒例の歌合戦も中盤だろう
地面に放り出されていた上着を拾い、青峰が桃井の横に立つ
「じゃあ名前ちゃん、かがみん、良いお年を」
「またな」
『また来年ね』
「来年こそ勝ってやるからな!」
「100年早えわ」
ニッと笑った青峰とニコニコと笑う桃井に手を振ってストバスコートを後にする
帰路、火神は青峰との対決が現在何勝何敗なのかを数え悔しそうにしていた