第17章 ウィンターカップ 前編
車で出て行った2人を見送り、体育館に1人になる
人のいない体育館は熱気が無くて寒い。いつも誰かが一緒にいたから初めての感覚だが、なんだか懐かしいと思えた
縮こまっていてもしょうがないと、バスケをしてみることにした
『よっと』
緑間の3Pシュートを頭に浮かべてボールを放ると、吸い込まれるようにリングにぶつかることもなくネットを潜る
どこまで入るのだろうと後ろにちょっとずつ下がってみるが、なかなか外れない
バスケもやっていたんだろうかと疑問に思う。前に帝光に行ったときも、ブザービーターを決めたことを思い出す
「すごいですね」
驚いて後ろを見ると、逆光で良く見えないが誰かがいる。その姿を見た瞬間何かが彼女の脳裏をよぎってひどい頭痛が襲う
『…ぐっ、』
「名前さん!」
『く、黒子君…?』
駆け寄った黒子が肩で息をしている苗字の背中をさする
「大丈夫ですか?
『だ、大丈夫、多分、いつもの頭痛だか、ら』
ただいつもより酷いが。しばらくすれば治るだろうと自分に言い聞かせる
その判断は間違いなく、時間の経過とともに彼女の呼吸が戻る
「落ち着きました?」
『うん、もう大丈夫』
行く前に旅館で買ったお茶を飲み一息つく。体調に問題なさそうなことに、黒子も安心したようだった
しかしなぜ練習時間なのに彼が体育館にいるのかが落ち着いた今疑問に思う