第17章 ウィンターカップ 前編
「苗字、黒子大丈夫そうか」
『火神君、大丈夫そうだよ』
「コイツすぐのぼせんだよなあ、ったくほら」
「ありがとうございます」
『…前にもここで、のぼせた?』
「毎年のことだっつの、学習しろ」
「気づいたらのぼせてるんです」
「だーかーら!のぼせる前にあがるんだよ!」
聞こえないのか聞こえていないフリをしているのか、何も答えないままポカリを開け飲む黒子に火神が怒っている
反応がないことに諦めた火神は溜め息を吐きながら自販機の前に戻る
「苗字もなんか飲むか」
『え、いいの?』
「おう」
『じゃあ、お茶もらえるかな』
「どれだ?」
『コレ』
指指した飲み物を火神がピッと押し、大きな身体を折り曲げてペットボトルを取り出す
「ん」と言いながら、こちらに差し出して来た
『ありがとう』
乾いた喉に冷たいお茶が通る瞬間がとても心地よいいつも以上に飲み込んだ後、思わず大きく息を吐いてしまう
「座りますか?」
『あ、ごめんねありがとう』
黒子の隣に座り、今日の練習がどうだったとか、明日はどんな練習をするのかを話題に花を咲かせる
お湯の温度が高かったのか、だんだん疲労感と睡魔が襲ってくるうとうとしてくる
返事の仕方や様子の変化に気づいた黒子が苗字に声をかけた
「名前さん?」
『なんか、眠くなってきちゃったかも』
「部屋戻るか」
『うん、そうする』
立ち上がり、足を進めようとするといつかにも感じた猛烈な睡魔が襲ってくる
苗字の体が倒れ始めるのを黒子がスローモーションのように感じながら手を伸ばす
「苗字!」「名前さん!」
とっさに火神が抱き止めなければ大変なことになっていただろう
黒子は出したものの行く先のない腕を下ろし、安堵のため息を吐く