第17章 ウィンターカップ 前編
温泉はちょうど誰もいなかったので貸し切り状態で楽しむことが出来た。サウナも水風呂も併設されており、水分さえあればそこそこ長時間の滞在も出来そうだ
『はあ〜…』
肺のすべてを吐き出すように深いため息を吐いて、寄りかかる
やはり体を動かすと疲れてしまうのだ。目をつむって考え事をしていると、男湯の方からみんなの声が聞こえてくる
『楽しそうだなあ…』
事実、彼らといると楽しいのだ。一緒にいれないことが少し寂しくなってしまう
そういえば色とりどりの彼らはどうしているだろうと考える
『誠凛みたいに後輩の面倒見てるのかな…』
でも京都と秋田まで行くのは大変だろうなあなんて考えていると、またウトウトしてきてしまう
さすがに温泉で眠って溺れるなんてことは恥ずかしいので、上がることにした
着替えて髪を乾かしていると相田が温泉に入りに行った
長い髪を乾かすのは腕も疲れるし時間もかかるし、リコさんくらいがいいのかななんて考えごとをしているうちに髪が乾く
タオルや着替えをまとめて出ると、ベンチに黒子が目元にタオルを置いて横たわっていた
『…黒子君?』
「名前さん?」
目元のタオルを取ってこちらを向く彼にどきりとした。恋愛的な高鳴りじゃなくて、背中に汗が伝うような感覚
「すみませんのぼせちゃって」
『…そう、なんだね。飲み物買おうか?』
「いえ、今火神君がポカリ買いに行ってくれているので」
『そっか、じゃあ安心だね』
黒子を心配そうに見つめているが、心臓がうるさくてしょうがない
まるでこの場面を事前に夢でみていたかのような、そんな感覚。誤魔化すように黒子に手で仰ぎ風を送っていると、後ろから足音が聞こえてきた