第17章 ウィンターカップ 前編
「朝日奈―!!決めろ!」
「夜木!回せ!!」
試合終盤、前半までは秀徳がリードしていたが後半に誠凛が巻き返してきた
見ていた苗字はなんだかそわそわした。自分が戦っているわけではないし、まだおよそ1か月にも満たない短い付き合いの後輩だ
今までの試合も手に汗握ったが、今日の試合が一番白熱している
「夜木くん!がんばれー!」
普段喜怒哀楽がわかりにくく、大声を出さない黒子も声を出して応援している。なんだかわからないけど目に涙が浮かんでくる
決着なんてつかなければいいのにと思うが、時間はどんどん過ぎてゆく
残り時間が0になった時、体育館にブザーの音が響いた
「っしゃーー!!」
喜びの声をあげたのは誠凛ではなかった。たった1ゴールの差で負けてしまった
先輩も黒子たちも喜んではいないが、既にウィンターカップの出場は決まっている
次に当たる時こそきっと、後がない試合だろう
「借りはウィンターカップで返す!待ってろ秀徳…」
「そうですね、燃えてきました」
「いや火神黒子、オレら試合でねーからな?」
今日何度この言葉を聞いただろうと、苗字が楽しそうに笑う
なんだか視線を感じてその方向を向くと緑間が「だから言ったのだよ」と言いたそうな顔でこちらを見ている
それに気づいた火神が犬のように「オレら出てねえからおは朝関係ねえっての!」とキャンキャン騒いでいる
選手が退場していくと客席も退場していく。降旗たちが片付けを始めていたので手伝おうとしたら「いいからいいから」と断られてしまう
普段マネージャーとして手伝ってくれてる分今日は休んでなという意味合いだったらしく、なにも手伝わせてもらえない苗字はその様子をただただ見ていた