第3章 ボクらの記憶
「…あれ、名前さんの髪が」
「ああ…そうだな」
「さっきオレ達が見たときまでオレンジだったっスよね…?」
「そうだな。だけど今は…藍色、だな」
「まーた…髪の色変わったのかよ」
「でも、その色も似合ってるっスよ」
みな疑問を抱きクエスチョンマークを浮かべていると、その中の1人である青峰が「おい赤司」と彼の名を呼んで、苗字の事を指さしながら問い掛けた
「コイツが髪変わったのって、理由あんのか?」
「…さあな。だが、藍色を見たのは初めてだ」
「今まで藍色って…なかったのか?」
「オレが見たことあるのは黒髪と茶髪と…オレンジだけだ」
黒子はそんな彼女に近づいて「…これじゃ、夜の色ですね」と言って笑ってから外を見た
すると夕方でオレンジ色に染まっていた空は彼女の髪のような藍色になっていて、彼らは少し寂しい気持ちに駆られていた
そんな中未だ涙を流している桃井に紫原が「大丈夫~?」と聞くと彼女は「うん…」と先程よりとても落ち着いた様子で答えた
「…名前ちゃん、起きるかなぁ」
「このまま起きないというのはないと思うが…」
「どーせ寝坊してんだけだろ」
「そうだといいっスねー」
彼女の病室は先程とは打って変わったように明るい雰囲気に包まれ、彼女がオレンジ色の涙をこぼしたことに誰も気付かなかった
しばしとどまった彼女の涙は枕に吸い込まれ、ただの透明な涙として消えていった
果たしてそれが何を意味しているのか、それは誰も知らなかった