第15章 みんな一緒に
コートからか歓声が聞こえてくる。両チームの入場が始まったのだろうか
木吉は後ろを振り返り、ハッとした表情をする
「やべ、試合か!」
「試合が何時からかくらい覚えとけオレらは第3試合だバアカ」
「急ぐぞ花宮!」
「なんでオレが迷子になってみたいになってんだよ…」
「じゃあな名前!気を付けて戻れよ~」
しゃべる間もなく繰り広げられた漫才のようなやり取りに圧倒され、「また」という言葉さえ出てこなかった
花宮さんも知り合いだったのだろうか、だがその割にはあまり会話がなかったのと、関心を持たれていなかったような気がする
『よし』
気持ちを切り替えるように小さく言葉にし、ペットボトルを抱えて観客席へ走っていく
ただ炭酸を持っているので揺れないように気をつけて、先程まで心のモヤモヤの存在はすっかり忘れていた
『さつきちゃん、ごめっ…お待たせえ』
「おかえり!どうしたの?息切れすごいね」
『ちょっと捕まっちゃって…花宮さんって知ってる?
第3試合の大学みたいなんだけど』
「花宮真さんかな?ちょっとまってね~」
桃井は自分のスマホをスクロールを始め、目当てのものを見つけた彼女はこちらにスマホの画面を見せてくる
先程会ったサラサラな髪と眉毛が特徴的な男性が映っていた
「霧裂第一の主将だよ。名前ちゃんが1年生のころWCの決勝リーグの相手だったんだ」
『へえ、相手のマネージャーまで覚えてるもの?』
『記憶に残ることにでもあるんじゃないかな」
桃井はWCのリーグ戦で黒子が花宮にボールで殴られそうになったのを、苗字が引き寄せて回避させたのを思い出す
「当時はいろいろあったけど…木吉さんと同じ大学になってからあんまり悪い噂聞かなくなったかなあ」
『悪い噂?』
「色々あったんだ」
彼女が言葉を濁すということはあまり言いたくないことなのだろうと推測し、それ以上苗字は聞かなかった