第14章 冒険に行こう
「ついでにいいか」
「なんでしょう」
「あいつとお前は一緒か」
勝った分の質問は既に答えてもらっていたが、個人の秘密でもないことであれば赤司は答えてくれるだろうと思っていた疑問を口に出す
普通に聞いたつもりだったが、少し語尾が変になってしまった
それを気にせず赤司は答え始める
「どうだろうな、一方を守るために生まれたと言うなら同じかもしれないが」
「あいつとお前は別人だったんだよな?」
「同じ記憶を共有し互いを理解し、お互いが別人ながら同一人物と踏んでいました
ただ今回の場合記憶など根本から違うので…完全な別人だと思っていいんじゃないでしょうか」
「まあ、赤司のことすら覚えてないもんな」
「黛さんはちゃんと覚えてもらっているということですか?」
「オレは元の方にすら覚えてもらってねえよ」
春からの一瞬のような短い期間を思い出す。彼女の髪がオレンジ色で、うるさい声が未だ脳に残っているあのラノベのような日々を
彼女は右目がオレンジ色の赤司を見て泣いていた。あの光景が、残された手紙が彼を未だに縛っている
「あいつは、もういねぇもんな」
「ええ、Jabberwockとの戦いで1人になったので」
「そうか」
伏せて話しているにも関わらず理解してくる赤司になんだがイライラしてしまう
酒を飲んでいたせいか余計なことまでしてしまったと、黛はプチ反省会を自分の中で行いながらトランプを片付ける
「お前、わざと負けたろ」
「なんのことでしょう」
「とぼけんなよ」
「黛さんの聞きたい事が、気になったのでね」
赤司はくすくすと笑う。彼の手札は確かに揃っていなかったが、捨てた札には同じ数字のカードが出ている
黛はそれを彼女が見る前に山札に入れ、シャッフルを始めた
「今の名前には負けたくないんでね」
「そうかよ」